小話 「 在庫はなぜ悪なのか? 」
在庫は悪である。という考え方があります。
在庫が悪なら小売りはできないじゃないか!となりますが、その通りですよね。
それでは、なぜ在庫は「悪」となるのでしょうか。
たとえば、1000円のものを仕入れて売るとします。
仕入れ原価は500円。
1個仕入れて、
1000円で1個売れれば、もうけは500円ですね。
お金は手元に1000円残ります。
手元のお金が500円増えましたね。
在庫 手元のお金
買 う 前 なし 500円
仕 入 500円 1個 0円
収 入 1000円 0個 1000円 ←500円増えた!
これを10個仕入れて、5個売れたとしましょう。
1個500円のもうけなので、2500円もうかります。
最初に買ったのは500円が10個なので5000円。
手元に残っているお金は5000円。
手元のお金は増えていません。
残りの5個を売らなければお金は増えませんね。
全部売り切れて、在庫が0になればいいのですが、
在庫が残る以上は、売れなければ現金化されません。
ここがミソ。
在庫 手元のお金
買 う 前 なし 5000円
仕 入 5000円 10個 0円 (500円×10個の仕入)
収 入 5000円 5個 5000円 (1000円で5個売れた)
もうけナシ!
在庫が5個残った。
BS(バランスシート(貸借対照表))上では、
現金は資産。
在庫も資産に計上されています。
現金だったものが、在庫に変わっているという事です。
現金と在庫、どちらが資金繰りを圧迫すると思いますか?
現金は在庫に換えられるれるけど、
在庫は買ってもらえなければ、現金に換えることができません。
という事で、残った 在庫は経費も支払えない資産になってしまいます。
これの何がいけないのか?
だって、お金がなければ何もできなくなりますからね。
給料を現物支給するわけにいかないし、
同じ価値がある!と言って、仕入先への支払いを現物にする事はできません。
いやいや、仕入は経費計上できるはず!
と思う方もいるでしょう。
その通り!
ですが、雑貨屋さんでは、なかなかそれができません。
経費計上するには、その商品を、
いつ、どこから仕入れて、いくらだったかを、単品で管理しなければなりません。
そのくらいPOSレジを入れればできるだろう?
と思いますが、まだまだ続きがあります。
どこから、いつ仕入れた商品が、いつ、何個売れたのか計上する必要があります。
ただでさえ8000~1万SKU(色柄別の最小管理単位)の商品あります。
加えて、雑貨の場合、
1つのメーカーの商品を1社だけから仕入れているとは限りません。
問屋を使うことで、
在庫のあるところから仕入れる、
条件の良いところから優先して仕入れるなどしています。
ですので、複数の仕入先になるものもあります。
さらに、入荷日まで管理するとなると、
仕入先コード、JANコード、入荷日を、
単品ベースで管理しなければならなくなってきます。
もう、気が遠くなってきてしまいます。。。
これができているGMSとか、すごいですよね。。。
なので、雑貨の場合は、売上原価率という方式をとります。
売上高に平均原価率をかけて、かかった仕入れ原価を計算する方法。
「この売上は、どうやって作ったのか?」を記録するのです。
売れた商品分の在庫は、
仕入れとして売上原価として経費計上できるけど、
残った分は、在庫として資産計上するようになります。
在庫は現金が資産に変わったもので、
支払いや資金繰りに回すことのできない資産になります。
で、さらに追い打ちがかかります。
この資産が会社の利益になるのです。
損益計算書で見る限りは、営業利益をみて赤字か黒字かを判断していますが、
決算の申告は、貸借対照表の利益で見ます。
会社の利益を計算するには、棚卸資産の評価をする必要があります。
これは、会社の基本的な収益力を示す売上総利益は、
売上高から仕入れなどの売上原価を差し引いて計算するのですが、
売上総利益 = 売上高- 売上原価 となります。
この売上原価は、
売上原価 = 期首の棚卸高 + 当期の商品仕入れ高 - 期末の商品棚卸高
つまり、売上総利益は、期末の棚卸資産の額によって影響を受けるのです。
棚卸で在庫が前期よりも多くなれば、利益が上がります。
利益があがるのはいいことでは?と思うのですが、これは計算上の事で、
現預金がどれだけ残っているのとは関係ありません。
この、計算上出てきた利益に対して、法人税がかかります。
法人税は、売上規模にもよりますが、だいた30~35%(高い!)
100万の利益を出した場合、
現預金の有無に関わらず30万~35万の法人税がやってきます。
利益が出ているなら、お金も残っているのでは?と、思うかもしれませんが、
それとこれとは別です。
たとえば、借入金があって、毎月10万返済しているとしましょう。
この分は、すでに備品や商品として払っている分なので、経費計上できません。
売上から上がった利益で返済する事になります。
借り入れ 100万 → 備品として1000万使った!
↑ここで経費計上する。
借り入れ返済 100万 ←これは、↑ここで経費に計上しているので、
支払っても経費計上はできない。
つまり、月10万の返済だとすると、
年間で120万の利益が出ていなければ、
現預金が減っていく事になります。
それだけではありません。
なんとか120万の利益を出したとしても、そこに法人税がかかってきます。
法人税は約30%ですので、
120万の利益に対しては約36万。
120万の借り入れ返済に加えて、36万の法人税がかかり、
156万の現金がなくなってしまいます。
現預金を増やすためには、その分を考えて利益を上げなければなりません。
もしもこの時に現預金の残高がなかったら。。。
考えただけでも恐ろしい。。。
借金を返済しながら、
利益を出して現金を残してゆくのは、
雑貨屋さんの場合は至難の業なのです。。。
本当は無借金でやっていればいいのですけど、
出店には莫大な費用がかかりますので、
なかなか自己資金ではまかないきれませんよね。
高い法人税を払いたくない!という事で、節税対策というのは。。。。
この話は長くなっちゃうのでまた今度。
以上の理由から、
在庫は現金を減らす元となる「悪」となってしまうのです。
ややこしいですね。。。
小売業が決算セールをするのは、
少しでも在庫を減らして、現金化しようとしているからなんですね。
営業利益で黒字のうちは、
銀行さんも資金融資に応じてくれるかもしれませんが、赤になったとたん。。。
おーこわい。
在庫のコントロールって、とっても大切です。
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